印象派を代表する画家、ルノワールは、若い時から友人や家族の肖像を描いています。ルノワールは、それまで主流だった写実的で威厳に満ちた雰囲気で描く画風と異なり、モデルを優しい表情と温かい色彩で描き、大きな評判を呼びました。
人気画家として名声を高めた時期に手がけたのが、裕福な銀行家夫妻の令嬢イレーヌを描いた本作です。透き通るような白い肌、華やかな青いドレス、細かく筆を重ねた栗色の豊かな髪には、少女の可憐さや輝く生命力が表されています。イレーヌの肌は筆を遣った跡が見えず滑らかで、画家になる以前に陶器の絵付け師として培ったルノワールの技能が発揮されています。その一方で、髪型や背景は筆跡を残した印象派らしい表現をしており、二つの表現方法が巧緻な技術によって集約されています。
ピエール=オーギュスト・ルノワール
(Pierre-Auguste Renoir、1841~1919)
1854年磁器絵付師の工房で徒弟奉公。1858年機械による陶器絵付けの普及で失業。1861年シャルル・グレールの画塾に学び、シスレーやモネらと交友を深める。1862年パリ国立美術学校に入学。1864年サロンに応募した《ラ・エスメラルダ》が初入選。1874年「第1回印象派展」開催。1876年《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場》制作。1879年《シャルパンティエ夫人と子どもたち》がサロンで入選、高評価を得る。1880年本作《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》制作。1892年《ピアノを弾く少女たち》が国家買い上げとなり栄誉を得る。1907年パリから南フランスに移住、1919年78歳で死去。
監 修 島田 紀夫(美術史家/実践女子大学名誉教授)
解 説 島田 紀夫(美術史家/実践女子大学名誉教授)
原画所蔵 E.G.ビュールレ・コレクション財団
©Emil Bührle Collection,Zurich/PPS
技 法 彩美版® シルクスクリーン手刷り
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