小倉遊亀は余白を「沓(よう)として漂う無限の空間」と語り、その表現に特別なこだわりを持つ画家でした。「初夏の花」においても、天に向かい真っ直ぐ枝葉を伸ばすミツバツツジと、ゴツゴツとした果皮が飄々とした味わいを醸し出す三宝柑が置かれたテーブルを、胡粉ベースの絵具を何度もかさねたプラチナ箔が優しく包み込み、深淵な世界を表現しています。
作品の中心に据えられた、モダンな縞模様が目を惹く花器は、ガラスを芸術にまで高めた岩田久利が1940年代に宙吹き(からふき)で制作したものです。ガラスの躍動感と重厚感が華麗に表現され、質感描写に定評のある遊亀の真価が余すところなく発揮されています。 艶やかな桃色が鮮やかな満開のミツバツツジ、三宝柑のみずみずしい黄色が、彩りに満ちた初夏の訪れを伝える、軽やかで明るさに溢れた一枚です。ぜひお手元でお楽しみください。
小倉遊亀(おぐら ゆき、1895~2000)
鮮やかな色使いと力強い造形の作品で広く知られます。高等学校で教鞭をとるかたわら、日本美術院同人の安田靫彦画伯に師事。以後、日本美術院を中心に活躍し、1932年には女性としては初めて同人に推挙されました。1936年、教職を辞して画業に専念。1980年には文化勲章を受章しました。以降2000年7月に亡くなるまで、日本美術院を代表する画家として活躍しました。
監 修 有限会社 鉄樹
原画所蔵 名都美術館(愛知県長久手市)
技 法 彩美版®シルクスクリーン手刷り、プラチナ泥使用
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