このニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵の作品は、ジヴェルニーの自邸でモネが描いた一連の作品のひとつで、日本風の太鼓橋がほぼ正面から、左右対称に描かれている。
緑を主調とした画面は静寂に満ち、森閑とした木々の影が光を浴びた池の水面に映える。花を付けて浮かぶ睡蓮は、視る者の目線を画面奥にまで導く。しかし、幽かに夏の陽に光るしだれ柳の鮮やかな緑は、画面中央の深緑の人工物の曲線によって大胆に遮られる。エキゾティックなデザインの太鼓橋と、神秘的とも言える水と植物が陽光の中に拮抗するこの1899年の《睡蓮の池》は、これ以後、最晩年の睡蓮の幽玄な大構図に向かって次第に制作を加速させていく画家の、実験的な変奏曲のひとつであったと言えるだろう。
監修:高橋明也(美術史家/三菱一号館美術館館長)
解説:高橋明也(美術史家/三菱一号館美術館館長)
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